九月の思い出 その②
さてさて、陣痛室での2日目。 すっかり主のようになりつつある母は、痛みを紛らわせるために木馬にまたがり昼を越え、またまた陣痛室で夜を迎えてしまいました・・・。
陣痛促進剤のお陰で多少陣痛は戻ってきたものの、母のお腹の中でにゃー君はうまく旋回出来ずにもがいておりました。
一体 いつになったら ママになれるの????
そんな不安の中、友達が病院に
『あの~OOさんってもう赤ちゃん生まれました??確か予定日もう過ぎたはずなんですけど~』
っていう電話を数人が何回も掛けたのでナースステーションでは
『OOさんって・・・(赤ちゃん)まだ~~???』
と、いろんな人からプレッシャーを受けてもなお時間が無駄に過ぎていきました・・・。
夜に担当の先生が子宮口を計りにやって来ました。その先生は女の人で、小さくて美人でおっとりとしていて、母は心の中で『さとう玉緒みたい・・・』と思ってました。 その玉緒ちゃん先生は母の陣痛の痛みを知りつつ、容赦なく子宮口に手をグバッと突っ込みました。んもう本当に痛くて痛くて、悶えていたら、玉緒ちゃん先生は母の血がついたゴム手袋をはめたまま、
『あの~・・・子宮口は7cmに開いてますね~・・・でも~・・まだ全開じゃないし~・・・なので~・・・もう一晩(出産まで)・・・かな?フフ♪』
その言葉の後はもう母にはおぼろげな記憶しかありません・・・。
確か過呼吸になって、酸素マスクがつけられて、麻酔を腰に打とうとした麻酔師の人に『ケイレン止めてくれないと、間違って注射してしまったら、あんた死んでしまいますよ!!』 って言われたのは覚えてます。
そして一時間弱して・・・
パンッ!パンパンッ!!パンパンパパパンっ!!!!!
ほらっ!!早く赤ちゃんの声聞いてあげて~~!!!!!!
母が目を開けるとそこにはベテランっぽい看護士さんの顔が、っていうか手が。母は麻酔が効いていたのでにゃー君が生まれた瞬間に寝ていたようで、産声だけは聞いておきたいだろうと看護士さんが起こしてくれたんです。(痛かったけど・・・)左の方を見れば待ちに待ったにゃー君がそこにはいました。陣痛という痛みから解放された喜びと、ようやく姿を見せてくれたにゃー君に母は感無量でした。
にゃー君はすぐに保育器に移されて、母は開いたお腹を縫ってもらっていました。 きっと先生たちは母が起きているって知らなかったみたいで、すごく世間話をしながらお腹を縫い縫いしてました。そのときに男の先生が一言、
『あ~割と子宮口開いてたんか~。もったいなかったな~』
ええやん、もう。しんどかったんやからさ。
そう思いながら母は再び眠りにつきました。それからにゃー君を抱くまでに一日に空白があるのですが、本当に母の記憶は出産後の部分だけ白い霧の中にあって、よく思い出せないのです。